この世界の一部になる

2018.7.26の日本経済新聞の「こころの玉手箱」で、いすゞ自動車の細井行会長が好きな映画のひとつとして紹介していた「No country for old men」を鑑賞。アメリカとメキシコの国境地域で繰り広げられる麻薬と金を巡る殺戮劇で、普段は見ないジャンルではあった。
見終わった直後、何が言いたいのかわからず、ちょっと混乱した。ただの殺戮劇とも思えず、もやもやとした思いが残った。でも、同時にこの映画は好きだとも思った。

何度か見返すうちに、冒頭の保安官の独白が伝えたいことかも、と思いはじめた。
 
引用すると、
I don't want to meet somethin' I don't understand. A man would have to put his soul at hazard. He'd have to say: 'O.K., I'll be part of this world.'
理解し難いものには遭遇したくない。人は自らの精神が危険にさらされたとき、こう言わざるをえないだろう。「いいだろう、この世界の一部になろう」と。

先日伊坂幸太郎氏の「死神の浮力」を読んだ。その中で引用されていた「寛容は自らを守るために不寛容に対して不寛容になるべきではない」に、偶然にも共通する思想を感じている。
感情の起伏のない殺人鬼も銃社会も自分としては受け入れ難い。でも、私には排除することもできない。受け入れるのとは少し違う気もするけれど、この世界の一部になるしかないのかもしれない。そうすることで、この世界は少しずつよりよい方向へ変化できるかもしれない。そんな風に感じている。
ノーカントリー (字幕版)