歓喜の演Vol.18

21世紀ADACHI芸術文化共同制作プロジェクトとして行われているクラシックコンサートに行ってきた。今回、プロの声楽家管弦楽団とともに、能動的に音楽に関わっている合唱団(区民公募)の方々を見て、私はとても刺激をもらったように思う。プロの演奏を聴くことが音楽との主な関わり方となったこの頃。もちろんそれは素晴らしい体験なのだけど、若い頃は、音楽を自ら奏でること、それこそが楽しくて仕方がなかったんだよな。そして、その気持ちが今なお自分の中に残っていたことは、予想外の発見だった。ドリカムの歌の「そっか 私 ずっと 泣きたかったんだ」じゃないけれど、そっか 私 ずっと弾きたかったのかもな。演奏会のあと、そんなことを考えて続けている。

演奏会のプログラムは、バッハのカンタータ第147番とJ・ラターのマニフィカート。マニフィカートとは、聖母マリアが従兄弟のエリザベトを訪ねた際に、神を讃えて歌った歌のことであるらしい。聖書のことをちょっと調べてみたら、この訪問日は、マリアもエリザベトも懐妊していて、祝日であったとのこと。バッハのカンタータはこの日を祝うための音楽であったと推測されている。この訪問日に関係した音楽-異なる時代の作曲家によりつくられたもの-を同時に聴けるのは、プログラムとして面白いと思った。

演奏としては、個人的にはラターのマニフィカートが印象に残った。バッハの曲からは神を敬うおごそかな気持ちが感じられるのに対し、ラターの曲は愛と喜びに満ちているような感じ。その感覚は、4曲目の"Et Misericordia"(神の慈悲に恵まれて)で最高潮に高まったように思う。メロディの美しさもさることながら、ソリストの経塚果林さんの伸びやかな歌声が全身に入ってくるような不思議な感覚があった。私は彼女の声がとても好きだった。

もうひとつ面白いと思ったのは マニフィカートには、ミュージカル「ウエストサイドストーリー」を彷彿とさせるリズムが取り入れられているということ。聴いてみると、確かに1曲目の"Magnificat anima mea"(私の魂は主を崇め)は、どこか”トゥナイト"っぽさがある気がする。こんなところでバーンスタインに出会えるなんて...と嬉しくなった瞬間だった。