セイジ・オザワ 松本フェスティバル2023

セイジ・オザワ松本フェスティバル2023に行ってきた。プログラムは、レナード・バーンスタインウェスト・サイド・ストーリーから「シンフォニック・ダンス」、ジョン・ウィリアムズの「チューバ協奏曲」、プーランクの「スターバト・マーテル」(合唱曲)、そして最後はラヴェルの「ダフニスとクロエ」から第2楽曲。どの曲も初めてだったが、特にバーンスタインのシンフォニック・ダンスとラヴェルのダフニスとクロエがすごく良かった。

 

バーンスタインのシンフォニック・ダンスは、クラシック音楽という枠にありつつ、その枠は超えていると思う。自分は知らなかったので加われなかったが、観客が「マンボウ!」と叫ぶタイミングもあって、そういう部分にライブ感があり、リズムにもジャズっぽさがある。ジャズ的な要素がうまく取り入れてある一方、オーケストラの古典的な楽器に対する敬意も感じられて、何より楽曲全体がおしゃれで華やか。さすがバーンスタイン!だと思った。

 

ジョン・ウィリアムズは、あまり聴いたことがない、と思っていたが、大嘘で、数々の映画音楽を作曲するものすごい人。E.T.スターウォーズも何もかもといっても過言ではないくらい、この人が作っている。このチューバ協奏曲には、そういう映画音楽のクライマックス感はないけれど、チューバというマイナーな楽器に光を当てた、稀有な曲だと思う。実際、チューバという楽器に注目したのは初めてだった。

 

プーランクスターバト・マーテルは正直きつかった。合唱曲は、音に加え、歌詞の意味を理解したいと思ってしまうのだけど、キリスト教に疎いのと、歌詞が英語ですらないので、全く理解できず。。。アーメンやグロリアといった言葉は聞き取れたものの、そもそもの背景がわからないので、それらの言葉すら心に響かないという結果になってしまった。これは演奏家ではなく、聴く側の問題だと思う。しかし、同じ状況でもバッハの旋律なら、敬虔な気持ちが湧き上がってきたかもしれない、とは思う。プーランクにはそれがないのはなぜなんだろう?プーランクはメロディアスな一方、不安定な音色が挟まれて、個人的に聴いていて気持ちが落ち着かないのが、影響しているかもしれない。

 

最後のラヴェルのダフニスとクロエは圧巻だった。特に、1曲目の「日の出」は、とても綺麗な曲。指揮者のステファン・ドゥネーヴとサイトウ・キネン・オーケストラの紡ぐ音が美しく、どこまでも広がる草原、もしくは大海原に、朝日がさしてくるようだった。朝日がさしてきた気がした時、私はあまりにも美しくて、少し泣いてしまった。美しくて泣くとか普通はないので、自分でも驚いた。プーランクとは違い、ラヴェルの音楽では、全ての音が綺麗に調和しているように感じる。こんな曲を作れるなんてラヴェルはすごすぎる。