すべて真夜中の恋人たち

川上未映子の「すべて真夜中の恋人たち」を読んだ。読んでいる間、冬子のぼんやりと生きる様子に飽き飽きしていたが、これって自分の人生かもしれない、と途中で気づく。交通事故を目撃しても自ら警察に電話したり、積極的に関わろうとはしない冬子。好きな人に好きとも言えない。親に言われた高校や大学を受験し、卒業後もたまたま入った会社で働く。職場の同僚とも積極的に関わることなく、やがて退職してしまう。

 

人生のときどきにおいて「選ばない」ことを選んできた結果の冬子の生き様をみて、うんざりしてしまうのは、自分自身のどこかが投影されているからかもしれない。

 

自分もどちらかと言えば冬子型の人間だと思う。でも、そんな人間でも、たまに欲しいものを選ぶ。その結果、手にしたものがガラクタでも、嘘の関係性であっても、選んだという事実が尊い。わたしのような人間からしたら、そう思う。そして、冬子のように、その出来事を自分が選んだ言葉、自分だけがわかる表現で意味付けするのは素敵な行為だと思った。その言葉の意味するところは分かり兼ねたが、読後の後味は悪くなかった。