ドライブ・マイ・カー

先月、オミクロンが盛り上がりを見せる中、映画館でドライブ・マイ・カーを見てきた。妻を失った男の喪失と再生の物語で、村上春樹の「女のいない男たち 」の中の同名の短編が元になっている。本がもとになった映画って、「原作を越えられていない!」と厳しく批評しがちなのだけど、これは、映画も原作もどちらもいいと思った。原作は、ただ物語が差し出されているだけで、それをどう思うも読者次第なところがいい。一方、映画の方は、監督が、複数の短編をベースとしつつ、自分なりの答えを出しているところが面白い。ただの原作の焼き直しでない、こういう独自の視点のある監督って素晴らしいと思う。

 

独自の視点として、個人的に好きだったのは、舞台として広島の町や瀬戸内海の島々を選んだところ。橋を渡って、瀬戸内の島々と広島の市街地を車で行き来することが、現実世界と内面を行き来する心の動きと一致しているような感じがしたし、トンネルに入っていくところでは、登場人物たちが内面に深く潜っていくような感覚があった。

 

あと、西島秀俊の演技も良かった。かっこいいのに、いい感じに枯れていて、女を失った男感がナチュラルに出ていたと思う。彼が、家福をやって良かったと思う。